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転売される会社
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勤務日数たったの5日間という、最短退社日記録を更新した私は、元アルバイト先の「まだあなたの欠員は補充していないよ」という言葉に「すみません!出戻ってもいいですか?」と図々しくお願いをしてみた所、快く了解を頂き、翌週頭からは又、元の会社にて勤務をする事となった。

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勿論、元アルバイト先の人たちからは「良く戻って来られたね!普通は恥ずかしくて戻れないよ」という半分嫌味の混じったからかいの言葉を頂いたが、こっちには生活がかかっているのでそれどころじゃなく気にもしなかった。
こうして又慣れ親しんだ会社にてアルバイトをする日常が始まったのだが、流石にこの図々しい私でも多少は申し訳けなかったな、受け入れてくれて有難かったな、という気持ちもあり、暫くは転職など考えずに心を入れ替えて、この会社に恩義を返すべく真面目に働く事にした。従来の週4日、実質一日5時間という勤務時間も、週5日のフルタイムへと変えてもらい、ガッツリ働き始めた。

それからの数年間は、会社自体も時代の波に乗り毎週店舗を出店する程の勢いで、毎日バタバタしながらも皆でああでもないこうでもないと言いながら、非常に楽しく充実した日々を過ごした。会社は徐々に大きくなり、従業員数もどんどん増え、最初は社内で行っていた店長会議も数年後には社外に会議室を借りなければ入りきらなくなる位になり、年に数回は店長会議と懇親会が開催され、私達事務所のスタッフもそこに招待して貰い、店長さん達と一緒に飲んでは交流し、徐々に仲良くなっていった。

そんな状態が続いたある日、親会社である前職の会社が、我々の会社から手を引くというニュースが飛び込んできた。これは後から聞いた話しだが、本社から出向で来ていた人達は何とかしてそれを阻止しようとあちこち走り回って色々と手を尽くしてくれたようだったが、所詮上が決めた事に逆らえるはずもなく、それを受け入れざるを得なかったようだ。

私達従業員は、社長からの「親会社がこの会社から撤退するに伴い、我々も出向元の親会社に戻る事となった。」という、断腸の思い溢れる言葉を涙を流しながら聞いた。
これから・・・どうしよう!!
元々、次の仕事が決まるまでの腰掛けのつもりで働き始めた会社であったが、既に入社して7年余りの年月が経つ間に、私はこの会社の事が大好きになっており、自分の生活においてとても重要な位置を占める所まで来ていた事に気が付いた。
そんな大事な会社を、これを機会に又辞めるのか、それとも続けるのか。

この時は非常に悩み考えた。また新しい職場に挑戦するべきか。それとも、だけど、しかし、ならば・・・悩みに悩み私はどうしても、この会社や7年の間に仲良くなったお店の皆と離れ離れになる道を選ぶ事が出来なかった。天塩にかけて皆で一緒に育ててきた会社を、どうして自分から辞める事など出来ようか。それ程会社や一緒にやってきた仲間達の事を大事に思うようになっていたのだった。

その後、合同で出資していた会社が受け皿となり、全株を取得して運営していたが、1年後、私たちが全く与り知らない間に全く別の会社に私達の会社は転売された。
この頃になると「こうなりゃ会社と一蓮托生だ!」という気持ちになり、一緒にやってきた仲間と共に新しい環境の中で更に仕事に邁進するようになっていた。
実際株主が変わっても、ただ入れ替わり立ち替わり数年毎に役員が変わるという事以外は、毎日の業務においては劇的に変化した所もなく、会社の方針は多少変わったけど、このままでいられるならそれでもいい、とさえ思っていた。だけどやはり世の中そんなに甘くはないのだ。そんな出来事がこの後待ち受けていたとは思いもせず。