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初めての転職
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そんな非常識な辞め方をした私だったが、会社は黙々と退職手続きを行ってくれて、無事に手元に年金手帳と雇用保険の離職票が送られてきた。

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こんな何も考えていないノーテンキな私でも、一応昔からやってみたいと思っていた職業があり、これを機会にと自分で調べて申し込み、専門学校に通い始めた。
それは「宝石鑑定士」という職業であった。元々妖しい美しさを持つジュエリーが好きで興味があったのだが、同時に黙々と作業をする専門職というものへの憧れもありこの仕事を目指そうと思い立ったのだ。それからは週に1回教室に通い、自宅で勉強しながら雇用保険の給付を受ける日を待っていたそんなある日、不義理をして辞めた前の会社の人事課の知り合いより「今何してるの?ヒマなら仕事手伝わない?」というアルバイトのお誘いがあった。

その人に今現在の自分の状況を説明した所、「次の仕事が決まるまででかまわない」という返答だった為、生活の為にありがたくその事務のアルバイトをさせて貰うこととなった。
その会社は前の会社が新規事業として、もう一社と合同出資にて立ち上げて間もない会社で、私は様々な雑務を週に4回、朝10時から夕方4時までという負担の少ない時間で働かせて貰う事となった。

立ち上げて二年目のその会社は、前職の会社からもプロジェクトチームとして数人が出向して来ており、中には顔を知っている人がいた事もあり雰囲気も良く、すぐに馴染めた。だが出来たばかりというだけあってまだまだ色んな制度や環境が整っておらず、むしろ何もかも自分達で調べて自分達で整備し作りあげていくという、ある意味気楽ではあるが遣り甲斐もあり、私にとってはとても居心地の良い職場となった。

そんな状態で働かせて頂いて一年余りが経った頃、私の専門学校においての授業も大詰めとなり、いよいよ卒業試験を受ける事となった。この試験に受かれば、いよいよ宝石鑑定士の仕事を探し始めなければならなくなる。
実際に一年働いて、私はこのアルバイト先の会社と、一緒に働く人達の事が好きになってきていた。
それでも、いつまでもこの会社にいるワケにも行かないし・・・という事で、一応自分なりに卒業試験に向けて勉強を開始し、その甲斐あってなんとか学校の試験にも合格し、無事に専門学校を卒業する事が出来た。さぁ、次は宝石鑑定会社への就職だ!

それから時間を見つけては宝石鑑定士の求人が出ている会社を探したが、実は宝石鑑定士というのは国家資格ではなく民間の資格であり、それには何種類かの資格がある。世界的に通用する有名な資格を取る為の専門学校の授業料はとても高額で私にはそこまで支払えるはずもなく、就職したいと思う宝石鑑定専門機関から出ている求人は、やはり専門資格と言えるものを有していないと応募も中々難しいのが現状であった。

私の場合は「資格取得」ではなく専門学校の鑑定士コース「修了証」の取得という事なので、それでも応募出来る会社を探していた所、宝石で有名な街にあるとある小さな宝石鑑定所にて「宝石鑑定業務の補助」の求人が出ており、早速応募し面接を受け、なんとか採用結果を頂く事が出来たのだった。

アルバイトで一年余り働いた会社に未練はあったが、自分の希望していた業界に就職出来た喜びは大きく、早々に退職する事を会社に伝えた。とは言え身分はアルバイトだったので特に業務を誰かに引き継ぐ必要もなく気楽なものであった。会社の皆は残念がってくれたものの、希望の会社への就職を喜んでくれ、社長自ら参加し送別会を開いてくれ、送別の品物まで頂き快く送り出してくれた。
皆さま、ありがとうございます!
そして私は希望に胸を膨らませながら、新しい会社への出勤日を待ち望んでいた。